青色オード・ミー

腐女子が学級会などに言及するブログです。

文字書きと誤字脱字報告

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 ひとりの文字書きとして、とても「分かる」と言いたい話だった。

 元増田に対して、「そんな程度で筆を折るなんて」「むしろありがたいと思え」と言っているコメントが多くみられる。その気持ちは分からなくもない。でもそれは、プロとして、「商業」ベースに乗せる前提の話であり、「今できる精一杯を」「かかったお金と同等のお金で頒布する」という形をとって行っている同人向きの話ではないと思う。

 前にも、「誤字脱字は最低限文字書きとしてしてはいけない」といったツイートを見たこともあった。その気持ちはもちろんある。誤字脱字があっていいと思っている文字書きは恐らくいない。だからこそ、「誤字脱字」を見つけてしまった時のショックがあるのだ。

 誤字脱字報告に受ける作りて側のショックの大きさは、おそらく、作品を作品として受け取る、つまり「読み手」にしかならない人にはあまり分からないのかもしれない。

 「読み手」は完璧な作品が欲しい。特に同人誌として「お金」を出す以上、金銭の授受はそれに伴って多少なりとも期待と責任が生じる。できることなら、自分の好きなキャラクターの、自分の好きな話を、その中で作品のそのもののイラストの描写力や文章力、構成力と違った「誤字脱字」なんてくだらないもので興ざめになるは嫌だと思う。

 でも、私が今まで作り手として作品を同人誌という形で出すときにも同じことを思っている。普段の生活があってその中でも「楽しいから」と締め切りに追われながらぎりぎりで本を出す中で、作るものは二次創作の同人誌でただのアマチュアでも、「お金をもらう以上、完璧なものを作りたい」「期待してもらってるのだから、その期待にこたえられるように責任をもって作りたい」そう思って作っている。

 それは、読み手としての自分がどうしても「期待」してしまうから。それを即売会で出すために必要だった実費しか払っていなくても「お金を出したからがっかりしたくない」と少しは思ってしまうから。それが普段の私なので、作り手になった時にも同じことを思っている。

 だから、誤字脱字報告がショックなのだ。「ここが間違ってました」と言われるのは、「ここに欠陥がありました」と言われるということで、「もしかしてがっかりさせちゃったかな」「お金まで出してもらって『期待』してもらったのに申し訳ない」と思う。読み手の私がそんなことを思ってなくても、作り手としてはどうしても、自分が読み手として抱いてきた「期待」が嬉しくてそこに「責任」を感じてしまう。

 報告をしてくれる人は全くの善意のこともあるだろう。好きだからこそ読み込んで、気づくところもあるだろう。でも、それを言われることで「申し訳ないな」と感じてしまう。だから、必死に誤字脱字を無くそうとする。でも、「本」として出せるぐらい小説を書くと、文字数はかなりになる。私が出した中で最も短いもので4万字程度。

 私は、Pixivに上げた作品を後日読むと2万字程度あれば必ず1回は誤字脱字を後で見つけて編集することになるし、同人誌では最後のエンディングのシーンで全く同じページを2P入れてしまうという大失態をやらかしたことがある。(頒布した後に気が付いてデータを確認したところ、完全に自分で編集時に同じページを繰り返し入れていた。あの時の本をお手持ちの方には大変申し訳ない。)いままで数冊しか出していないし頒布数も少ないためか、本を手に取ってくださった方からは一度も指摘を受けたことはない。

 元記事の原文は上で読んでいただくとして、そのままここには引用しないが、その誤字脱字報告がPixivなどのオンラインでいつでも編集可能でなおかつ相手がそのコンテンツを受ける際に金銭の授受が関わらない場合なら、話は別だろう。

 自分の作品の誤字に恥ずかしさを覚えながらも、まだ「ありがとうございます」とだけ言ってその感謝の気持ちだけで後は修正するだけだ。でも、一度刷ってしまったものは元に戻せないし、ましてや頒布してお金と交換して他人の手に渡ったものはどうしても戻せない。

 誤字は、書いていると気づかない割に読んでいると違和感が強い。だからこそ「手に取ってくださった方に申し訳ない」とすぐに思う。

 もちろん誤字脱字が無いのが一番だ。その申し訳なさを感じないためには「誤字脱字報告」など受ける余地が無いような、少なくともその点においては完璧なものを作ればいい。でも先にも言ったように、それをアマチュアが、特にその「手間」自体にはお金を貰ったりもしないものを完璧に仕上げるのは難しい。

 文字書きにもいろいろといて、誤字脱字は絶対に起こさないように5回も6回も読み返して、何人かの人に頼んで誤字脱字は絶対に起こさない人もいるだろう。その人たちは純粋にすごいと思う。

 でも、私はできない。必要ないとすら思っている。そこまで頑張って誤字脱字を撲滅することに意味があるとは思えない。そんなことに時間を使って神経をすり減らすぐらいなら、文字数を少しでも増やしたり、読み直して物語そのものをブラッシュアップすることに使ったほうがいささか有意義だと思う。それでも、誤字脱字報告は心が削られる。

 誤字脱字を絶対に許さないという考え方もあってもいいと思う。また、元増田に報告をし続けていた人はそこまでの強い意思はなく、作品作りの手伝いとしてそう言っていたのかもしれない。たぶん文字書きの中にも、同人誌の誤字脱字報告を喜ぶ人はいるとは思う。

 ただ、私は文字書きの視点としてはオフ活動の誤字脱字報告はしないしされたくないと思っている。このような考え方もまた一つの考え方で、元増田に対しての意見のように「気にしなければいい」「筆を折って正解」「誤字脱字報告は善意」と押し付けるのではなく、「あーそういうのもあるんだー」と素直に受け止めてもらえたらいいなと思う。

 

 

2021.08.17追記

Twitterで回ってきた記事を読んで「これだ!」と思ったので掲載させていただきます。

私の上記内容とは必ずしも一致しないのですが、読んでみてとても腑に落ちました。本質的にはこちらのほうが感覚に近いかもしれないです。

utap.hateblo.jp